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第50話 佐伯は俺のものだから

last update Date de publication: 2026-05-03 06:20:31

時計の針が真夜中を指す頃、俺の呼吸はようやく人間らしいリズムを取り戻した。

泣き疲れて、喉はひりひりするし、手足は冷えたまま重くて、でも、どうにか水を飲むだけの体力は戻っていた。

ペットボトルを置くと、佐伯が俺の隣――触れられる距離に、静かに座る。

“こんなふうに壊れると思ってなかった”

そんな空気を全身から漂わせていて、でも責めてくる感じはまるでなくて。逆に、俺のほうが気まずくていたたまれない。

「……さっきの続きなんだけど」

佐伯は、ゆっくり俺の目をのぞき込んでくる。

目が合った瞬間、怖くて逸らした。

聞きたくない。聞きたくないけど……聞かなきゃダメだ。

俺が視線を落とすと、佐伯は落ち着いた声で言った。

「橋本に、もうやめて欲しいってちゃんと伝えた。アプローチっていうか、あの猫被り含めて、南緒にマウント取るのも。俺に触るのも」

その言い方には、迷いも、気まずさも、変な優しさもなくて。

ただ、

“俺が嫌だからやめてほしい”

それだけが透けて聞こえた。

「……で、何が目的でやってんのかも、聞いた」

俺は目を伏せる。

そんなの、聞かなくてもわかって
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  • バ先のダウナー男子に、気付けば毎日溶かされています。   【番外編】モブ腐男子からみた佐伯×小瀧①

     どもです。 ワイ将の名前は、モブ田モブ太朗。 日本で一番有名な東帝大学工学部に通う、ゴリゴリに理系の三年生。 そして「年齢=彼女いない歴」を、この先も半永久的にインクリメントし続ける予定の、生粋・純度百パーセントの腐男子だ。 元々オタク気質ではあった。 アニメ、漫画、ゲーム、一通りは嗜んできた自負もある。 だが中学時代、「BがLする世界」の存在を知ってしまったのが運の尽きだった。 あの日から俺は、もう戻れない沼を全力で平泳ぎし、気付けば底へと沈んでいた。 旧Twitterでは日々BLを愛する同志たちと繋がり、商業・同人を問わず摂取を続ける毎日。 属性の好みは驚くほど偏っていて、 「クールな執着系美形ドS攻め」と「可愛い美青年系の無自覚健気受け」。 この二点が揃った瞬間、俺の理性は仕事を放棄する。 自宅の本棚は保存用・布教用・読む用で完全三分割。 薄い本と商業BL漫画に物理的に圧迫され、アクスタに囲まれ、痛バ制作のために缶バッジを無限回収する日々。ここまで来ると、もはや趣味ではなくライフスタイルだ。 そんな俺の平和な二次元中心生活に変化をもたらしたのは、まさかの三次元での出来事だった。*** きっかけは、山田という大学の友人の紹介で始めたアイス屋のバイトだった。 飲食経験は一応ある。だがワイ将、アイス屋は完全に初挑戦。 それより何より、この職場には一つ、統計的に明らかに偏りのある特徴があった。 働いている人間、全員が全員、平均値より明確に「上」の顔面スペックを有しているという点だ。 男女問わず、美男美女。例外なし。分布の歪みがひどい。 まあ、視覚情報が購買意欲に直結する商売なのだから、合理的判断ではある。 顔面偏差値の高い人間を前線に置けば、売り上げが伸びる。至極真っ当な最適解だ。 一方で、正々堂々モブ人生を歩んできた俺はというと、面接前日に山田から指導を受けた。 「髪はセットしろ」「眼鏡はやめてコンタクトで来い」。 採用確率が上がるらしい。人間社会は、思った以上に外見パラメータ依存型である。 「繁忙期のレジ要員だけでもいいから」と頼まれ、時給の良さに釣られて応募したはずが、気づけばトントン拍子で採用となり、短期契約は長期雇用へと書き換えられていた。 人間社会は常に不確定要素で満

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